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ある日の授業記録

国語

最高水準問題集13.鷲田清一『跨がれる時間』から

第一印象

 

 作者は、哲学者で初見では理解がしがたい文章を書くことで有名ですが、この文章に関しても、捉えどころがありそうでないような、難しい文章となっています。その理由は、確かにこの文章は論理的に書かれてはいるのですが、その構成が、AはBである。そいえばBといえばCである。CといえばD・・・というような、随想的なものになっていることです。つまり、最初から首尾一貫してまとまった文章にしようというガチガチな(しかしある意味わかりやすい)ものではなく、徒然なるままに随想を重ねて、最後にぱっと結論を提示する、というのが著者の特徴です。

 

 ただ、このような文章にも対処の仕方はあります。それぞれの段落の主従関係または並列の関係を考えることで、意味段落の切れ目を探すというオーソドックスなやり方です。この文章では、様々な具体例が展開されていますが、その具体例が何を論証するために用いられているかを把握することで答えに大きく近づくでしょう。

 

本文のテーマについて

 

 この文章は、この次にやった広大付属の文章と被って「他者」について論じています。

 

 他者とは、基本的によくわからないものです。しかし、わかっているつもりになっているものでもあります。人間は、自分のことしか(場合によっては自分のことすら)よくわかっていないのに、他者のことを理解しよう、分かりたいという衝動にかられます。

 

 この文章に於いては、「応援団」や「戦地に出向いた家族の女性」などを題材に「苦しみの共有」を試みる姿がいくつも描かれています。他者と同じような経験をすることで、また苦しみの時間を共有することで、他者との共通点を増やし、一体感を得ようとしているのです。

 

要約

 

第1意味段落 応援団の奇妙なふるまい

 

 スポーツは勝つためにするものかもしれないが、実際は負ける経験から逃れられない。それを踏まえ、応援団の苦行としか思えない振る舞いを理解しようとすると、彼らは敗北の苦しみを競技者とともにすることを「美学」としているようにすら思える。

 

第2意味段落 苦しみの共有と時間感覚の変容

 

 苦しみの共有は、苦しみの時間の共有によって達成されうる。「祈り」「待つ」という行為は、今の人が忘れかけている時間の中にどっぷり浸る経験である。しかしながら、現在は時間に対する価値観は大きく変容し、前述の浸る対象から、跨がれる対象になった。

 

設問について

 

問一 傍線部①「そこ」が指示する内容を、「こと」に続くよう三十字以内で答えなさい。

 

 「そこ」とあるので、原則通り直前を見ます。同じ段落では、負けたときに他人のその悔しさ、悲しさがよくわかるから、とあります。ここまでの文章の流れも、主に負けることに関する記述であり、傍線部と同じ段落は、その負けることを推奨する理由を説明し、さらに傍線部と同じ文では「意味の大半」(≒理由=なぜ・・・か)と述べています。したがって、傍線部と同じ段落を要約します。

 

(解答例)負けることの悔しさを理解し、他人の悔しさ・悲しみを理解できる(こと)

 

問二 傍線部②「勝ってくれたら困る」とあるが、

 

(1)「応援団」が「勝ってくれたら困る」というような、通常の論理に反するかに見える論理を何というか、本文より漢字二字で抜き出して答えなさい。

 

(解答)逆説

 

 知識があれば、すぐ解けますが、そうでない場合は、本文中で「通常の論理に反するかに見える論理」を述べている部分を探します。ここでは、(競技というのは本来勝つためにするものであるが)競技においてもっとも普遍的な経験というのは、逆説的にも、負けるということの経験」という部分にたどり着けるかどうかです。尤も、この言葉を知らないことが前提なので、難易度はいくらかアップしてしまいますが。

 

(2)どうして「勝ってくれたら困る」のか、「から」に続くように答えなさい。

 

(解答例)確かに普通に考えれば、試合は勝つために行うものかもしれない。しかし、応援団の振る舞いは、まるでじりじり敗北に近づいている悔しさを選手と共有しようとしているようにさえ見える」(から)

 

(解答例)応援団の苦しみに満ちた振る舞いは、最後は敗北の悔しさを競技者とともにするためにある(と作者は考えている)(から)

 

 応援団の振る舞いについて、長々と書いてある部分は具体例なので、まとめます。傍線部前後の接続関係を見ると、「勝ってくれたら困る」の前に、「・・・だとすると」というのがあるので、これは英語でいうIF(条件、仮定)と同じように、前後の文の結びつきが強いことを読み取ります。あとは、「それ」の中身が何なのかを考え(直前の「敗北の悔しさ」です)、この文章の核である「苦しみの(時間の)共有」というワードを入れると完璧です。

 

問三 傍線部③「判官びいき」の意味を説明した部分のA、Bに当てはまる漢字一字をそれぞれ答えなさい。

 

(解答)「弱」者、あるいは薄幸のものに「味」方したいという心持ちである。

 

 知識の問題です。そこまで難しくなかったのではないか。

 

問四 本文の内容に当てはまらないものを、次のア~カから二つ選び、記号で答えなさい。

 

ア 競技スポーツにおいては、勝つことに意味はなく、負ける経験の中にのみ学ぶことがある。

 

ウ 語源をたどると、英語圏の人々も「判官びいき」に似た精神を持っていたと想像できる。

 

オ 「占い」は、現代人が経験できるようになった時間の反復方法の一つである。

 

(解答)ア、カ

 

アは「のみ」と断定しているのが怪しいですが、確かに本文は負けることについて述べているので、少し迷うかもしれません。そういう時は、ほかの選択肢を一通り見てみましょう。

 

ウは、判官びいきと同じ段落に、英語の「シンパシー」の説明があることから、前段の「判官びいき」と同種の内容を並列している可能性が高いという形から入り、中身を見ると「そういえば・・・も苦しみの共有を意味する」とあるように、前段と同種の内容を述べていることを確定します。

 

オについては、時間の「反復」は最後の段落において、現代における時間間隔を表す言葉の一つとして使われていることから、やや迷いが生じたかもしれません。ただ、「反復」とはすでにあったことを繰り返すときに使われる言葉です。占いは、この文章においては将来起こることに対する行為であり、過去の事実に対する「反復」と区別できます。

 

※「時間を跨ぐ」=(過去を)「反復・再生する」+(未来を)「先取りする」

 

※今回は「当てはまらないもの」を選ぶので、その点気を付けましょう。

 

問五 本文の「応援団」「恋文」の例は、どのようなことを言うためにあげられているか。次の説明文の()に適当な内容を答えなさい。ただし、「時間」「他者」の二語を必ず使用すること。

 

 用語指定は、文字数指定以上の強烈なメッセージです。つまり、この問題の解答は「時間」と「他者」という2つの概念をそれぞれ中心とした、2つの要素で答える問題と、予想します。

 

 そのうえで、時間と他者がどのように関連しているかを考えます。

 

 本文全体の趣旨を見ると、最後の現代における時間間隔の部分を除けば、「他者との(苦しみの)時間の共有」がテーマであることが読み取れるかどうかです。ヒントとしては「敗北の悔しさを・・・ともにする」「苦しみの共有」「無念の時間を・・・共有する」などの記述があります。これらは、全て具体例の後にあることにも気づいたでしょうか。具体例の後にある、抽象的な言葉は具体例で言いたかったことである可能性が極めて高く、注目に値します。

 

 応援団の例は、上で書いたとして「恋文」について少し補足しましょう。

 

 恋文の段落の冒頭に「そのようなもの」というのがあるので、その内容を確認すると「無念の時間の共有」≒苦しみの時間の共有であることが分かり、形の上で恋文の例は、苦しみの時間の共有を説明するためのものという先入観を持ちます。

 

 そのうえで、内容を見て、応援団の例と似たようなものであることを確認します。

 

※冒頭の通り、本文は随想的に書かれているので、捉え方によっては「奇跡を信じて・・・皮膚をやかれるような思いで」という部分のみが次の段落に続いていると読むこともできます。そうすると、恋文の例の解釈も「苦しみの時間の共有」というよりは「不安や緊張で身をやかれる」ことの例ということになります。私は、こちらの解釈のほうがなじむのですが、問題文が「応援団」「恋文」と並列しており、並列は基本的に同種のものを並べることから、2つはイコールだという先入観のもと、やや穿った解釈をしています。

 

(解答例)不安や緊張で身をやかれるような時間を共有することで、他者と苦しみを共有できる

 

広大付属2017年第1問野矢茂樹『心という難問 空間・身体・意味』から

第一印象

 

  いきなり冒頭から「相貌」というテクニカルな用語が出てきます。が、ここで思考停止せずに諦めずに読んでいけるかどうかです。また、この文章は「他者」とは何か、という哲学の大きなテーマを扱っており、これもまた初見のテーマの場合、困惑する人がいたのではないでしょうか。

 

 ただ、文章自体は論理的でまとまっており、用語と用語の相互関係をとらえていくことで、全体像が見えてくるのではないか、と感じました。

 

本文のテーマについて

 

  「他者」とは何かは、難しい問題です。ただ、物事を考えていくと「他者」の存在なしには成立しないであろうことも多くあります。物理的な「もの」だけではなく、言語や相貌といった観念的なものも、他者の視点がなければ存在しえないと、著者は述べます。

 

 また「物語」という用語も出てきますが、これはご存知の通り小説とか本の形をとった物理的な「もの」ではありません。簡単に言えば「物語」=「人生」でしょうか。確かに、人間は物体かもしれません。単なる電気信号やエネルギーの交換が起こっているだけなのかもしれませんが、一方で私たちは「心」というものの存在を自覚しています。その「心」は、私たちに物事に対する見方(価値観)を提供したり、行動基準を提供したりします。人によっては、これは脳が作り出した「幻想」ということもありますが、この「幻想」こそが物語なのです。

 

 さて、本文に立ち返ると、著者は「他者」を分析するにあたり、「物語とは何か」から考えるルートを選択しました。このように、大きすぎるテーマに立ち向かう場合には、周辺のやや具体的なテーマから分析していくことも、人文学ではよくあるので、覚えておくと役立つかもしれません。

 

要約

 

 第一意味段落 他者性の正体

 

 他者とは、物語の「断片的な粗筋」を共有するが、全てを全く共有することはあり得ない。この共有しきれない、物語の細部の存在が、他者性の存在を示唆するのである。私たちの生きている世界では、各人一人一人が主人公の物語が、同時進行していており、この状態は列車にたとえられる。

 

第二意味段落 相貌における他者性の必要

 

 非言語的な相貌については、他者は必要ではない。しかし、言語的な相貌については、使用者の視点と評価者の2つの視点が必要なことから第三者の視点が不可欠である。したがって、言語的な相貌を経験しうるのは、一人だけではなく、他者の存在が必要となる。

 

設問について

 

問一 傍線部A~Dのカタカナを漢字に改めよ。

 

(正解)A 詳しい B 摂取 C 活躍 D 捉える

 

問二 1~3に入る最も適切な語を次のア~カからそれぞれ選び、記号で答えよ。ただしそれぞれの記号は一度しか使えない。

 

(正解)

 

1エ かつ

 

2ア もちろん

 

3ウ たとえば

 

接続詞の問題は、前後の文(文章)との関係を考える問題といってもいいでしょう。

 

1は、「複数の人が」という主語に対して、その内容をA、B二つの要素で限定しようとしているので、A「かつ」Bとなります。

 

2は、前の段落で完全な他者はいないと述べた後で、完全な他者(にみえるもの)は存在すると正反対のことを述べています。ここで「しかし」を選びたくなりますが、「しかし」は「同格」のもの(同格だが対立するもの)を並べるものです。

 

 つまり、前の段落は著者の意見のしかも中心となる部分です。これを「しかし」でつないでいるとすると、著者の意見が次の段落で全く変わってしまい、今までの主張が台無しになってしまいます。ここでは、前の段落に対してより細かい説明を付け加える(従たる意味の)接続詞「もちろん」(・・・「しかし」)を選択します。なお、「もちろん(確かに)」は「しかし」とセットでよく使われます(呼応するともいいます)ので覚えておくとよいでしょう。

 

3は、前の文で抽象的なことを述べていて、その後具体例を出しているので、例示の「例えば」を選びます。

 

問三 傍線部①「完全な他者」とはどのようなものか。二十字以内で説明せよ。

 

 「完全な他者」は著者が否定している概念です。したがって、細かく説明している部分があり、そこをまず発見します。この傍線部の場合、「・・・以上」とあるので、その前の部分が理由となり、後の部分が結論になっていることを読み取ってもいいでしょう。また、傍線部の直前を見て気が付けばそれで大丈夫です。

 

 著者は、他者について説明するときに「物語」というキーワードを何度も用いています。解答作成に当たっては、このワードを中心に膨らませていくとよいでしょう。

 

(解答例)いっさいの物語を共有していないもの。

 

問四 傍線部②「物語には『主人公』がいる」とあるが、ここでいう「主人公」とはどのようなものか。五十字以内で説明せよ。

 

 傍線部と同じ段落を探します。「・・・という意味ではない」と言っているということは、次の部分でどういう意味なのかを述べている可能性が極めて高いです。

 

 太郎の具体例の中で、「世界に向けて関心を示し、ものごとを価値づける」と述べている部分は、記述が一般的なので、そのまま解答に利用できます(設問は「主人公」一般について聞いているため)。

 

 そのあとの「・・・にとって価値づけられた物語世界を生きている」の部分も主語を太郎から、一般的なものに変更すれば使えます。

 

(解答例)自身にとって価値づけられた物語世界の中で、世界に向けて関心を示し、ものごとを価値づけるその人自身。

 

問五 傍線部③「ポリフォニー的な物語世界」の例として最も適切なものを次のア~エから選び、記号で答えよ。

 

ア 国語の授業で『走れメロス』を読み、メロスの友情のあり方について自分の意見を書く。(正解)

 

イ サッカーの試合後、チームメイトとプレーについて討論し、お互いの考えを確認する。

 

ウ 大勢でごった返す年末の街角で、幸せそうな親子を見かけ、微笑ましい気持ちになる。

 

 傍線部をみると直前の「この状況」のことを「ポリフォニー的な物語世界」と表現していることが分かります。したがって、「この状況」とはどんな状況なのか、ということを本文から読み取ります。ここでは、列車という具体例の分析です。

 

 列車の乗客は、それぞれの関係が希薄でありつつも、きわめて断片的な物語の粗筋を共有します。そして、乗客は一人一人が物語世界の主人公です。

 

 ウは、列車の例でいえば、ある乗客が別の乗客をみて自分の物語に影響を与えることを「ポリフォニー」と表現していると言いたげなので、不適です。

 

 イは、チームメイトと意見を共有することが「ポリフォニー」だといっているので不適です。

 

 アは、一見違うように見えるかもしれません。しかし、各々がメロスの友情のあり方についてそれぞれ自分自身の意見を持つ、という事態を「ポリフォニー」だとすれば、列車の例と被ります。

 

 このように、具体例を一般化して、あてはめていくことが本問のコツです。

 

問六 傍線部④「しかも言語は本質的に公共的である」とはどういうことか。「しかも」の内容を踏まえながら、七十字以内で説明せよ。

 

 「公共的」という言葉を言い換えればよい、というのには多くの人が気づいたでしょう。

 

 むしろ「しかも」の内容とは、何なのか、それをどうつなげていけばよいのかに困惑したのではないでしょうか。

 

 「しかも」は累加(内容を付け加える)の接続詞ですから、どんな内容を付け加えて「言語は・・・であること」という記述につなげるかがポイントとなります。

 

 形としては、「・・・・・だけではなく、言語は・・・・である」というものがよいでしょう。

 

 内容としては、そのままつなげると「言語的な概念による相貌は、(外部からもたらされた)物語を了解することによってもたらされる」となります。

 

 「公共的」については右上の段落で「言語は本質的に公共的である・・・その道筋を示す」という部分があるので、直後を読んで「他者」との関わりを発見します。

 

(解答例)言語的な概念による相貌は、第三者の存在によってもたらされるだけでなく、言語それ自体が他者の存在を前提としてしか成立しえないということ。

 

英語(英検3級)

筆記試験部分

趣旨

 

・穴埋め、並び替え問題

 

 これらの問題で聞かれる知識は、文法・語彙の力です。

 

 どちらにせよ、この設問における主語や動詞、目的語の位置など、

 

英文を単にさらっと読むのではなく、どこがどこを修飾しているかなどの、

 

問題の切り分けが重要になります。

 

 それを踏まえたうえで、十分な知識を獲得しましょう。

 

・読解問題

 

 読解問題では、文法・語彙力というよりかは、本文の趣旨を把握する力が問われます。

 

いたがって、基本的な英語力があれば、あとは国語の問題になります。

 

 

 

リスニング試験部分

趣旨

 

 リスニング試験では、基本的に文法は聞かれません。

 

筆記試験よりも平易な文章(日常会話)を聴いて、

 

何を話しているのかを把握する力が問われます。

 

 

 

したがって、全体をくまなく聞き取るというよりは、むしろ、

 

冒頭のwhenやwhatといった疑問詞など、重要箇所を聞き逃さないことが大切です。

 

 

 

この人の場合は、すでに十分な力がありましたが、

 

そうでない場合には、どこを最低限聞き取れば分かったのかを意識すればいいでしょう。